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皮膚病情報

しつこい疥癬

2009年5月24日

Dr.サッサー

ヒゼンダニによる皮膚感染症です。人から人へと簡単に接触感染し感染力が強い皮膚病です。
ヒゼンダニ成虫は0.2〜0.4mmと肉眼でやっと見える大きさです。メスは1カ月の間に1日2〜3個の産卵をします。卵は3〜4日で孵化して幼虫から成虫になって10〜14日間生きます。人間から離れても3日間は生きていますが、十分な湿度環境があれば2週間は生き延びるようです。コタツなどが生き延びる絶好の環境です。感染後1カ月の潜伏期(無症状期間)をおいて発症しますが、ダニ数が多い角化型疥癬はたった4日でも発症します。

ヒゼンダニ

●皮膚症状

顔面頭部を除く四肢躯幹に強い痒みのある皮疹(小丘疹、結節、疥癬トンネル)ですが湿疹との鑑別が難しいです。皮疹の特徴は、手指間、手首、腋窩、頚、臍、そけい部、肛門、亀頭・ペニス(男子)など好発部位の大型丘疹や湿疹です。睡眠を妨げるほど夜間の痒みが強いです。
確定診断は皮膚科専門医の診断(診察・病変部の顕微鏡検査で虫体、虫卵、糞の発見)が必要です。病院・老健施設など集団施設で疥癬が発生している場合や施設で複数の痒みを訴える患者が出た場合には、疥癬の可能性があると考え早期対策を取る必要があります。

●治療

外用剤は、クロタミトン(オイラックス)が一般的ですが、オイラックス耐性疥癬虫が増加して効果が悪いですね。安息香酸ベンジル、γ−BHC、ペルメクトリンも有効ですが日本では未承認薬剤です。
1%γ−BHCは毒性が強いが効果も高いので難治性疥癬、重症疥癬、爪疥癬に使われます。
ペルメクトリンは毒性が低い割に効果が高いので海外ではよく使われますが、生後2ヶ月以上の乳児や妊婦、授乳中の婦人への投与も可能です。日本でも早く発売が待たれます。外用剤の塗布方法は、顔面以下の全身(耳後部、手足爪の間、肛門)に余すところなく塗布することが必要です。いい加減に塗ると再発します。また、家族全員がいっせいに治療しないとピンポン感染していつまでたっても治りません。
内服剤は、イベルメクチン(ストロメクトール)が著効しますが、再発例もしばしばあります。虫卵には効かないので1週間後に2回目の投与が必要であるが、再発難治例では4〜5回投与することもあります。各薬剤の使用にあたっては毒性、使用方法など専門的知識が必要なので皮膚科専門医に相談してください。

●対策

たいへんですが、布団のシーツ、カバー、下着や衣類は毎日替えてください。スリッパも感染源になる可能性があります。 感染力が強く、医師、看護士、コメデイカルスタッフ、患者家族に簡単に感染するので、病院施設・医療関係者の認識と疥癬対策委員会の設置など総合的に取り組まなければ、いつまで経っても疥癬は終息しません。

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