財務省への要望書(日本臨床皮膚科医会 近畿支部)
財務省
2011年12月4日
日本臨床皮膚科医会近畿支部長 笹川征雄
要望
市販類似薬(ビタミン剤、健胃剤、弱いステロイド外用剤、OTC販売皮膚科治療剤、弱い鎮痛内服剤)を公的医療保険給付対象外とする案を破棄されたい。
政府・財務省・厚労省は、国民の命と健康を守る使命を果たすべく、上記の要望を実現されたい。
先の行政刷新会議の事業仕分けにおいて、市販類似薬(ビタミン剤、健胃剤、弱いステロイド外用剤、弱い鎮痛内服剤)は、公的医療保険給付対象外とする議論があり、見直すべきではないかとの意見が出されているが、皮膚科専門医にとっては医学的に社会的に容認できるものではない。事業仕分けの資料では、「これまでの実績によって重大な副作用が起こらないことが明らかになった」とあるが、それはどのようなエビデンスに基づくのであろうか大いに疑問である。皮膚科専門医で構成され全国組織である日本臨床皮膚科医会では、昨年OTC(市販薬)薬被害実態調査を大々に実施したがOTC薬による被害は大きな影響があった。皮膚科軟膏療法は誰でもできると軽視されているが、軟膏療法(*)は「皮膚科治療の命」といわれるように皮膚科治療の基本となる技術である。適切な診断と適切な軟膏選択による良い治療のもとに早期の治癒が導かれる。事業仕分けの資料にある「医師の処方を通さずに薬局で保険外で購入できる」となれば、不適切な治療と症状の遷延化と悪化を来すことになり、返って医療費が増加することはこれまでの事実から明白である。日常診療でもこのような素人による不適切治療による悪化症例はあとを絶たない。国民に良い医療を提供し、医療経済的にも効率的な医療を実践できるように、皮膚科で頻用される、抗真菌剤(水虫外用剤)、ステロイド外用剤、ビタミン剤を保険適応から外すことに反対の意を表明する。政府・財務省・厚労省は、国民の命と健康を守る使命を果たすべく、上記の要望を実現されたい。
(*)
軟膏療法は、疾患の種類、病変部の状態・病勢、発症部位、性別、年齢、季節、社会的要因、患者の希望などを総合して、適切な軟膏の選択と外用方法(単純塗布、重層塗布、混合塗布、ODT)を選択するという高度な知識と熟練した技術が必要である。単に軟膏を塗ればよいというものではない。
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財務省への要望書(日本臨床皮膚科医会 本部)
平成21年12月1日
厚生労働副大臣
長浜 博行 殿
日本臨床皮膚科医会 会長 加藤友衞
「市販品類似薬を保険外」の見直しに関する要望書
謹啓
時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は、日本臨床皮膚科医会に対して格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、標記につきまして、さる11月11日の行政刷新会議の事業仕分け会議において審議されたところでありますが、極めて重大な問題が含まれております。
市販品類似薬が保険外になれば、医療費の中で患者負担割合が増えることを意味し、保険給付割合が減ることで国家財政や保険者にとっては好都合ではありますが、患者の立場からは到底容認できないことであり、国民的議論が必要と考えます。
*現在の患者負担割合3割は先進国中最高値であり、これ以上の負担増は「患者負担は将来にわたり3割を維持する」とした健康保険法の趣旨に照らしても問題であり、国民皆保険制度の空洞化、崩壊につながりかねない。
*受診抑制による一時的な医療費削減効果はあるとしても、初期治療が疎かになれば重症化の危険性があり、医療費は逆に高くなる危険性がある。
*病院での処方が減ることで、薬局での安易な購入が進み、薬剤の副作用の見逃しや病状の悪化につながる危険性がある。
*一般的に安価な市販品類似薬が保険外となれば、医療機関では高価な先発医薬品しか処方しなくなる可能性があり、医療費は高騰する危険性がある。
そもそも、国民皆保険の中で、病気の治療を求めてきた患者に対して保険外であることを理由に多大な負担を強いるのでは、安心して病院を受診できない、医療において貧富の差による差別があって良いものか、という素朴な疑問がわいてきます。
以上、市販品類似薬が保険外にされることには多くの問題があり、国民目線からは絶対に容認できないことであり、慎重な審議をお願い申し上げる次第です。
謹白